ADHD 注意欠陥多動性障害あるいは注意欠如多動症の症状は、本やインターネットでもだいぶ知られるようになってきました。
しかし、症状の特徴を読んでも「自分もADHDかもしれない。けれど、本当に自分に当てはまるのかな!?」「もしかしたら、単なる自分の努力不足のせいであって、病気のせいにしようとしてるだけなんじゃないか!?」と迷われることが多いかもしれません。
そこで、別の視点(心理学的視点)から、ADHDの症状の出方やその特徴をまとめてみました。
こちらも合わせて読むことで、
・「自分にも当てはまるかもしれない」となんとなくの自己判断ができるようになったり、
・適切な対処へとつながることができれば、
とても嬉しいです!
(もし、「ADHDの症状やその特徴」を「まだよく知らない」場合は、こちらの記事から読まれることをオススメします。)
ADHDの特徴のまとめ・・症状や原因を理解しセルフチェックする重要性
ADHD(注意欠陥多動性障害・注意欠如多動症)の症状や特徴を心理学の視点から分かりやすく説明してみる
ADHDは特徴的な行動がたくさんありますが、羅列して並べられてもわかりにくいですよね。
ADHDを、心理士であるままりい流で、ものすごーくざっくりまとめると、
『注意集中を向ける、振り分ける(選択する、うまく配分する)維持する、やめる』
が普通の人と比べてとっても不器用な(難しい)疾患」
と考えています。
つまり、「注意集中のコントロールが難しい」と捉えています。
例えば、こうした「注意集中の向け方」の問題が、
「向ける」の問題なら → 忘れ物が多い、うっかりミスが多い
「振り分ける」の問題なら →やることの優先順位をつけられない うまく並行作業ができない
「維持する」の問題なら →作業をやりかけても、途中でほったらかしになる
「やめる」の問題なら →自分の興味関心のある作業なら、時間を忘れて、ずっと没頭してしまう(過集中)
といったように、様々な症状としてあらわれます。
また、ADHDの特徴のひとつ「衝動性」に関係するものとして、別の視点から説明していきます。
まず、例をあげますね。
コピーをとっている最中、「ああ、お腹すいたなあ~」と思いました。
けれども、今は仕事中なので、コピーを終わらせ、 資料をファイルし終わり、上司に報告し、一息ついてから、お昼を済ませることにしました。
何気ない仕事の一コマなんですが。
この文章の中の「ああ、お腹すいたなあ~」という意識は、心理学では「辺縁思考」と言います。
文章例のように、仕事や作業をしているときに
「あっ、足がかゆくなってきた」
「ちょっとトイレに行きたくなってきた」
「そういえば、今日雨降るっていってたっけ!」
みたいに、突然 意識の中にポップアップしてくる思考のことを「辺縁思考」と言います。
この辺縁思考ですが、正常な大人の場合、
「この大事な作業が終わったら、トイレに行こう(足のかゆみをなんとかしよう)」
「今は中断しにくい仕事をしている最中だから、雨は今関係ないし、とりあえず仕事の続きをやろう」
というように、「辺縁思考」がふとしたときに浮かんでも、それが状況に合う内容かどうかを適切に判断し、必要でないのなら、その思考を抑え、目的の作業に注意を戻すことができます。(「注意の選択、維持が適切にできる」状態です)
このときに、「自己を抑制する」という力も働きます。
ここでの「自己を抑制する力」とは、「注意を向けたり、選択したり、維持するために、いったん感情などの他のこころの働きをいったん抑制すること」と思ってください。
先ほどのコピーの例では、上司から頼まれた仕事に注意を向け、「お腹すいたなあ~」という辺縁思考を自己抑制することになります。
このように、通常の大人は、「うまく注意をコントロールする」+「そのときにうまく自己抑制を使っている」ことができます。
しかし、ADHDの方は、『適切な注意の選択、維持をするための「自己の抑制」』にも問題があるため、辺縁思考や衝動的な欲求が起こると、そちらに意識がごっそりともっていかれてしまいます。
感情についても同じで、
例えば、「上司に、自分が全くやってもいないミスを指摘されて、突然激しくしかられた」とします。
「え!?なんで!?理不尽なっ!!」と感じ、こころの中で、カッと怒りが生じても、
通常の大人の場合、無意識に自己抑制が働き、
それと同時に、
「上司はなにか勘違いしているのかもしれない」とか、
「いくら理不尽と思っても、上司には怒るわけにもいかないしな~。さてどうしようかなあ・・」
と考え直し、
適切な行動をとると思います。
しかし、ADHDで衝動性に問題のある人は、この上記のとき、通常であれば働く自己抑制がききづらいので、
「え!?なんで!?理不尽なっ!!」という思いとカッとした怒りの感情、
これらがそのまま、表に出てしまいます。
そのため、対人関係で生の感情や意識をぶつけることになり、トラブルが起こりやすくなってしまいます。
これは、対人関係の例で説明しましたが、この現象が持ち物に向く場合もあります。
例えば、スマホ(あるいは携帯電話)を家の中で持っていたとします。
スマホで調べ物をしていて、ちょっと一息つこう・・と思った矢先、
「あっ、洗濯物を干してなかった!」と思い出したとします。
通常、
①「洗濯物、早く干しとかないと!」
↓
②「あっ、ちょっと待てよ、スマホどうしようかな・・」
↓
③「まずは、スマホを片付けて・・」
↓
④「それから洗濯物を干そう」
という思考、行動のステップになるのですが、
ADHDの場合、「洗濯物干していなかった!」という考えがポップアップしてきたときに、
②の部分に当たる「あっ、ちょっと待てよ。今何してたっけ・・そうそうスマホ!スマホどうしよう・・」という行動する前に考え直すという自己抑制が効きづらく、
「洗濯物干してなかった」→「洗濯物どうしよう!!」というように、洗濯物に注意が全部もっていかれます。
結果、スマホには注意配分がされないため、「無意識にどこかに置いてしまう」ということになります。
これがひんぱんに繰り返されると、「置いた場所が分からない!」「しょっちゅうモノをなくす!」という現象が起こることになります。
ちなみに、ままりいも対人関係では抑制は比較的よく効くのですが、(仕事柄もあるし(^^;))
スマホの例のように、モノへの意識配分がヘタで、しょっちゅうモノをなくします・・・(-_-;)
ここまでまとめると、
「意識的、無意識的に自己抑制する」ことがとても苦手な特徴がある
ととらえるとうまく理解できるかなと思います。
どうすれば分かりやすく読めるかなあ~と思考錯誤しながら書いたのですが、かえってわかりにくくなっていたらゴメンナサイ。(^^;)
(そのときはコッソリ教えてくださいね(^^;))
ここで、もう一度、前のページに事例として載せていた、Aくんの事例を見直してみますね。
事例1:Aくん
幼稚園では、「活動的で元気な子」としてみられ、大きな問題はありませんでした。しかし、小学校に入るようになると問題がみられるようになります。授業中は落ち着きがなく、いすをガタガタさせたり、先生の話を聞かずに友達に話してばかり、先生が何度も指摘しても治りません。
毎朝、持ち物をお母さんが確認し持たせているのですが、帰宅時には、連絡帳やプリントが入っていなかったり、プリントをなくしてしまうことがしょっちゅうです。
宿題もなかなか自分からやろうとせず、お母さんがさんざん注意して、やっと取り組み始めるのですが、窓の外が気になったり、すみっこに置いてあるおもちゃが気になったりで何時間もかかってしまいます。
また、遊んでいるAくんに気づいたお母さんが、「途中で遊ばない!宿題を終わらせなさい!」と注意すると、「なんで宿題なんか、やらないといけないの!?ぜっったいにやりたくないっ!!!大っ嫌い!!」と、すごい勢いで
食ってかかることがあり、お母さんは困ってしまいます。
そうかと思えば、Aくんの好きなスポーツカーの話になると、目をキラキラさせて好きな車種についてや、エンジンやギヤの解説、どういうところがかっこいいかなど詳しく話をするので、お母さんや先生はAくんに知的な問題があるとは思えず、
「だらしがない子だなあ。ちゃんと学校の勉強にもマジメに取り組んだらいいのに!」と呆れています。
こうした行動は、学年が上がっても全く改善される気配がありません。
前回の記事では、Aくんの行動を見て、ADHDのどんな症状に当てはまるか、ということを説明しました。
今回は、Aくんの問題を、「注意のコントロール」の問題としてとらえるのなら、
「帰宅前に連絡帳やプリントを入れ忘れる」 →注意を「向ける」の問題・「落ち着きがなく、授業中もすぐにいすをガタガタさせる」
「宿題に取り組んでも、窓の外やおもちゃが気になる」→注意の「維持」の問題
といった問題があると考えることができます。
また、
「『宿題を終わらせる』ために、『おもちゃで遊びたい!』という気持ちをおさえる」
「『お母さんに注意されてカッとなる』が、『お母さんは宿題をするために注意してくれた』と思い直し、『怒る気持ち』を抑える」
という、「自己抑制の問題」もあるともいえます。
ADHD(注意欠陥多動性障害)の特徴があるかどうかのチェックのやり方。ささっと直感的に確認できる方法
こうした特徴をふまえて、自分の困っている行動、あるいは周りの「気になっている子(方)」の行動に当てはまるか考えていきます。
まずは、困っている行動を全部、簡単に箇条書きにします。
例えば・・
・忘れ物が多い
・言われた雑用を忘れることが多い
・人の話を聞かず、途中で割って入る
etc・・・
①箇条書きにした行動が全部(→ここがポイント!)「「注意集中のコントロールが難しい」というところで説明がつくんじゃない!?」という
感覚が持てる
②そして、問題行動があるために、「自分や周りの人間がとっても悩んでいる、困っている」かつ「日常生活や仕事をやる上でこれまでずーっと支障が出ていた(物心ついたときからそうだったなど)」
場合、
ADHDを疑って、何かアクションを起こす(もう少し詳しく調べる、相談してみる、受診してみるなど)ことを積極的に考えてみてください。
注意!
ADHDは他の疾患(例:自閉スペクトラム症)との合併が多いので、
①のところで、箇条書きにした問題行動が全部ADHDの問題からくるとは限らない場合もあります。(症状が重めの場合、特にそういうことが多いです)
その場合、②のような「困り感」が強ければ、やはりアクションを検討してください!
また、「注意のコントロールの問題」は別の原因(例:頭部外傷など)によって起こる場合もありますので、ADHDだと決めつけないでください。あくまで適切に行動するための自己判断の参考にする程度のものです。
もう少し客観的に注意欠陥多動性障害かどうか把握するためのチェックリストもありますので、こちらも今後の記事で紹介していきますね。
まとめ
ADHDは、「不注意」、「多動性」、「衝動性」を特徴とする疾患ですが、特徴的な症状を並べただけでは、少し分かりづらいかなと思いました。
そこで、ADHDは、「注意集中をコントロールする」「そのための自己抑制をうまく使う」ことが難しい疾患であることを理解していただき、
自分の(あるいは周りの気になっておられる子(方)の困っている行動、症状が、そうした「注意集中の問題」の範囲で説明できるのかな?
と考えてもらうことで、「もしかしたらADHDかもしれない!」あるいは「いや、これは違うかもしれないな」と判断する参考材料のひとつとして書きました。
そうした「注意集中の問題」が日常生活やお仕事をこなす上で、「慢性的に問題」になっているかどうかも判断するポイントとなります。
よろしければ、ぜひご参考にしてみてください(*^_^*)。