ADHD(注意欠陥多動性障害/注意欠如多動症)の症状に強い影響を与えているとされるワーキングメモリーの問題。
そのワーキングメモリーをトレーニングすることで、ADHD症状の改善がみられたと報告する研究も出てくるようになりました。
一方で、反論もあるようです。このページでは、「ワーキングメモリーのトレーニング効果に対する反論」をご紹介し、「じゃあ、結局どうすればいいの?」と途方にくれてお困りの方へ、私の独断と偏見混じりの意見と治療の取り組み方をお伝えします!
さて、前回の記事では、
・ワーキングメモリートレーニングをすることで、ワーキングメモリーのテスト得点が向上し、
・ワーキングメモリーのテストだけでなく、他の種類の認知機能のテスト(例:反応抑制テスト)も得点が上昇し、
・実際の行動場面においても、注意集中の問題の改善、ADHD症状の改善がみられた
といった、かなり期待が持てる研究結果が報告されていました。
ワーキングメモリーのトレーニングは効果なし? 疑問有りという研究も
しかし、一方で、反論として、以下の記事もあります。
記事の内容を要約しますと、
・過去の研究の再検証(効果研究のメタ分析)を行う
・結果、ワーキングメモリーのトレーニングを行って、ワーキングメモリーテストの得点は上がるのだが、それが、より生活や環境に適応するために
必要な知的能力(例:流動性知能、注意/阻害、数学など)テストの得点をあげることにつながっているかというと、そうではない。
がーん・・(゚Д゚)
これはつまり・・前回の記事でもお伝えしたのですが・・・。
これまでの認知トレーニングの弱点って分かってるんですね。
「認知トレーニングをやれば、その部分のテスト得点は上昇するが、(例えば、短期記憶を改善するトレーニングを受けたとして、トレーニング後、短期記憶のテストをすると、その得点は上昇する、という意味)それに近いが種類の違う認知機能の力(短期記憶の例で言うと、ワーキングメモリーとか、作業処理速度とかがそれにあたるなど)が上がったり、知能が上がったり、現実の適応力が良くなったりするということはない」結果が出ています。
で、結局メタ研究をしてきちんと分析すると、正常のお子さんを対象にしたワーキングメモリートレーニングの効果もこれまでの研究結果と大きく変わらない・・という結果ですね。
なるほどー・・・
残念だけど、まあ納得だわー(-_-;)・・だって、これまでの認知トレーニングの治療効果研究と同じような結果ですからね・・。
『「認知トレーニング」をやっても、「領域特異性(トレーニングをしたジャンルの得点のみが上がる)」がある』というのがこれまでの定説なのに、
それが「ワーキングメモリートレーニングだけは別よ!!トレーニングすれば他の認知機能も改善し、実際の症状改善につながる画期的なトレーニングよ!」
とか言われても、私からすると、にわかには信じがたかったですし(^_^;)
ワーキングメモリーのトレーニングは効く?効かない?結局どっち?
ここからは、私の私見になりますが。
先ほど紹介した記事の中では、
・正常なお子さんを対象としたメタ分析では、「ワーキングメモリートレーニング」は実際の知的機能の向上につながっているかについては議論の余地がある
という研究結果が出ているものの、
反論データは、「正常の」お子さんを対象にしたデータです。
「正常の」機能を「より高くするためのトレーニング」と、
「通常より苦手な」機能を「できるだけ改善していくためのトレーニング」とでは、
作用メカニズムが異なる可能性もあります。
そういったことをふまえて・・・
実際、何らかの脳機能のトレーニングをすれば、そのジャンルの得点が上昇することは事実です。
また、私が関わってきた患者さんたちを思い出しますと、脳機能のトレーニングをすることで、実際場面でも、「あっ、人が話をしているときに前よりも注意を向けられるようになったなあ」とか、「会話をしていていも、人の話を少し聞けるようになってきたかも」など、程度の差はあれ、スタッフが細かい改善に気づく場合もあったりしたこともあります。
(脳トレの効果が、明らかな症状の改善というところまでつながっていないけれど、リハビリや心理治療の専門家が見れば、細やかな改善、ささいな点の改善にはつながっているのではなかろうか、という程度の印象です。)
このような経験もあるので、試せる余力があるのなら、積極的にやってみてもいいんじゃないかなと思います。
ただ、「ワーキングメモリーのトレーニング」をやるからといって、
・「ワーキングメモリーのトレーニング」ばかりにお金や時間をかける
このようなことはオススメできません(^_^;)
あくまでも、
・大きく改善が見られなかったとしても、許せる範囲である
のなら、試してみてもいいと思います
まあ、「ちょっと息抜きとして、気分転換にでもやってみようか。それで、症状がよくなったら儲けもんやん」くらいのスタンスでよいです(笑)
ADHDの対処としては、
・周りにも理解してもらう
・適時、ムリのない範囲で周りにサポートしてもらう
・ツールやメモの活用
・環境を工夫する
といった様々な対処法があります。その中のひとつとして、「ワーキングメモリーのトレーニングを行い、ワーキングメモリーの力を鍛える」というやり方を取り入れる、というスタンスが良いように思います。
また、ワーキングメモリーのトレーニングのような「認知トレーニング」とは別に、「スキルトレーニング」というやり方を組み合わせて使うことで、より効果が出るという研究結果もありますので、その2つを組み合わせて使うことも効果的かなと思います。
(この2つのトレーニングの違いや組み合わせ方については、再び説明しますね)
【関連記事です】
・ワーキングメモリーの分かりやすい説明と、ワーキングメモリーの弱さがADHDにどう関係しているか書いています。
ワーキングメモリーはどうADHD症状に影響するか?トレーニングとは?
・ワーキングメモリーを鍛えることはADHDに効果があるの!?
今回の記事の前編にあたる記事です。
ワーキングメモリを鍛えることはADHDに効果はある?大人には?
・ワーキングメモリーのトレーニングとしては、料理がおすすめです。先に書いたように、「認知トレーニング」「スキルトレーニング」の両方が訓練でき、無料でできるからです。料理をどのように実践していけば、「ワーキングメモリーのトレーニング」として効果的なのか、めっちゃ本気で考えてみました(→だって私が実践したいから(^_^;)!)
この記事については、こちらです。
ワーキングメモリー訓練は無料でできる料理がおすすめ!やり方は?
ワーキングメモリーを鍛える!無料の方法で料理がおすすめ(主婦などお料理中~上級者編)
・コグメド社の「ワーキングメモリートレーニング」のレビューについて書いています。
ワーキングメモリーを鍛える方法とは?コグメドの内容を詳しくレビュー
コグメドのワーキングメモリートレーニングのレビュー(続き)
コグメドのワーキングメモリートレーニングのレビュー(完結編)
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